簡易課税事業者のインボイスへの対応


簡易課税制度を選択している事業者のインボイス制度への対応を解説します。

適格請求書発行事業者の登録

消費税を納めている課税事業者は迷わず適格請求書発行事業者の登録をしましょう。
原則課税でも簡易課税でも登録しない理由はありません。
*ただし今後免税事業者になりそうという方は後述の2年(超)縛りに注意が必要です。

登録には「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出します。
申請をすれば登録番号がもらえ、自分自身が発行する請求書や領収書などに番号を入れることができます。

インボイス制度が始まるとこの登録番号が重要になってきます。

普段の経理、会計で変わる点

インボイス制度開始で最も影響を受けることが少ないのが簡易課税を選択している事業者です。
恐れることはありません。

簡易課税は売上高をベースに消費税を計算するため、経費で支払った内容は関係ありません。
もらった請求書やレシートにインボイス登録番号が入っていようが、いまいが関係ありません。

これまで通りの経理処理、会計処理を続けていけば大丈夫です。

会計ソフトも急いでインボイス対応のものへ変更する必要もありません。

自分自身が発行する請求書、領収書などにインボイス登録番号を記載し、税率ごとに区分した請求額と税率、税額などを記載すればOK。

売上高が1,000万円以下になった場合

消費税は基準期間の売上高が1,000万円以下になると免税事業者になります。
基準期間というのは2年前を指します。

ですが、適格請求書発行事業者の登録をしている場合には免税事業者にはなりません。
売上高は関係なく課税事業者のままです。

もし適格請求書発行事業者である必要がなく免税事業者になりたいという場合には、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。
免税事業者になりたい期間の初日から15日前までに提出が必要です。

本来免税事業者になる方が適格請求書発行事業者に登録しているために課税事業者になっている場合は2割特例という制度が使えます。

簡易課税は業種によって預かった消費税の1割〜6割を納付すると決まっています。
ですが本来免税事業者である期間は、簡易課税の業種区分に関係なく預かった消費税の2割を納付すればよいという特例です。
この特例を使うための届出は必要ありません。
2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間が対象です。
言い回しがややこしいですが、個人の場合は2026年分の確定申告まで使えます。

2割特例に関する国税庁の案内はこちら

簡易課税の業種区分で1割、2割納付の事業者にとっては意味ありませんが、3割〜6割納付の業種の方にとっては助かりますね。

2年(超)縛りにご注意

適格請求書発行事業者の登録をした場合、2年間は納税義務が免除されないという規定があります。
基準期間の売上高が1,000万円以下になったとしても免除はされません。

正確に書くと「登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、基準期間の課税売上高にかかわらず、納税義務が免除されない」となります。

ここでいう「登録日から2年を経過する日」とは登録日の前日を指します。
登録日が2024年1月1日なら2年を経過する日とは2025年12月31日です。
2025年12月31日の属する課税期間の末日までは納税義務が免除されないということは2024年と2025年は課税事業者になるということです。

1/1の登録ならいいのですが、1/2の登録だと前日が1/1になります。
1/1の属する課税期間の末日までは納税義務が免除されないということは実質3年間免除されないということです。

ただし、2023年10月1日を含む課税期間中に登録をした場合は2年縛りの適用がありません。

個人の場合で考えると
・2023年中に登録 → 期限内に取消し届を出せば2024年から免税事業者に戻れる
・2024年1月1日に登録 → 2024年、2025年は最低でも課税事業者
・2024年1月2日以降に登録 → 2024年登録日〜12月31日、2025年、2026年は最低でも課税事業者

2年縛りといっても実質3年近く縛られることもあるということです。

売上高が徐々に減っていって、今後1千万円以下になるかもという方は2年(超)縛りに注意が必要です。

売上高が5,000万円超になった場合

簡易課税は基準期間の売上高が5,000万円以下の場合に適用される制度です。
5,000万円を超えた場合は自動的に原則課税となります。

原則課税になるとだいぶ話が変わってきます。
インボイス制度の面倒さが待っています。

次回のブログで原則課税の対応について解説します。

まとめ

インボイス制度が始まっても簡易課税を選択している事業者は恐れることはありません。

適格請求書発行事業者の登録をし、ご自身が発行する請求書やレシートなどに必要事項を記載すればOKです。

売上高が変動して1,000万円以下や5,000万円超になったときには注意が必要です。

注記
*この記事は「課税事業者選択届出書」を提出していないことを前提に書いています。「課税事業者選択届出書」を提出した場合は取り扱いが異なります。

*この記事は2023年9月4日現在の法令・通達等に基づいて書いています。

税理士やってます。

税理士 西野伸太郎

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